ロボット工学

ダンパーを含んだ剛体振り子の運動(加減衰システムの場合)

今回は、算出した運動方程式から実際にシステムの運動を求めていきます。

 

運動方程式の算出方法については、こちらの記事を参考にしてください。

実際にダンパーを含んだ剛体振り子の運動方程式を算出してみる ばねとダンパーが付いている棒からなる質量-ばね-ダンパーモデルについて、実際にシステムの運動方程式を求めていきます。 ...

 

運動方程式を解いてシステムの運動を求める

前回に引き続き、図の様なモデルを用いてシステムの運動を求めていきます。

 

このシステムの運動方程式は、

$$ \frac{1}{3} m L^2 \ddot{\theta} + \frac{4}{9} c  L^2 \dot{\theta} + \frac{1}{4} k  L^2 \theta = 0 $$

と表すことが出来ます。

 

この線形微分方程式を\(\theta\)について解くことで、システムの運動を算出します。

 

このような2階線形微分方程式の解\(\theta(t)\)は

$$ \theta(t) = C_1 e^{\lambda_1 t} + C_2 e^{\lambda_2 t} $$

となることが一般的に分かっています。

 

この時の\(\lambda_1\)と\(\lambda_2\)の値によって、システムの運動は、

  • 加減衰システム(Overdamped System)
  • 臨界減衰システム(Critically Damped System)
  • 不足減衰システム(Underdamped System)

の3種類の運動に分類することが出来ます。

詳細は、こちらの記事を参考にしてください。

質量-ばね-ダンパーシステムの運動を求める 今回は質量-ばね-ダンパーシステム(Damped Mass Spring System)を用いて、モデルの振動(運動)について考...

 

実際にシステムの運動を求める

今回のモデルについて、棒の質量が\(m=1[kg]\)で長さが\(L=1[m]\)、そしてばね定数を\(k=10[N/m]\)とした時、

ケース1 ダンパー\(c=10[N/(m/s)]\)

ケース2 ダンパー\(c=4.1079[N/(m/s)]\)

ケース3 ダンパー\(c=1[N/(m/s)]\)

の各ダンパー定数の場合に、棒を時刻t=0で\(\theta_0=1[rad]\)で静かに離した時の運動を求めます。

 

ケース1: ダンパー\(c=10[N/(m/s)]\)

今回の運動方程式、

$$ \frac{1}{3} m L^2 \ddot{\theta} + \frac{4}{9} c  L^2 \dot{\theta} + \frac{1}{4} k  L^2 \theta = 0 $$

について、

$$ M = \frac{1}{3} m L^2 $$

$$ C = \frac{4}{9} c  L^2 $$

$$ K = \frac{1}{4} k  L^2 $$

と置くと、

$$ M \ddot{\theta} + C \dot{\theta} + K \theta = 0 $$

と\(\theta\)についての2階線形微分方程式の形で表すことが出来ます。

 

この線形微分方程式について、\(\lambda\)を求めると、

$$ \lambda = – \frac{C}{2 M} \pm \frac{1}{2} \sqrt{\left( \frac{C}{M} \right)^2 – \frac{4 K}{M} } $$

となります。

 

これにケース1での各パラメータを入力すると、

$$ \lambda_1 = -0.5885 $$

$$ \lambda_2 = -12.7449 $$

となり、2つの異なる実数になることが分かります。

 

よって、このシステムの運動は、

$$ \theta(t) = C_1 e^{-0.5885 t} + C_2 e^{-12.7449 t}$$

となります。

 

この式と時刻\(t=0\)での初期条件\(\theta(0)=\theta_0=1\)と\(\dot{\theta}(0)=0\)を用いて、\(C_1\)と\(C_2\)を求めます。

 

時刻\(t=0\)で\(\theta(0)=1\)なので、

$$ \theta(0) = C_1 e^{0} + C_2 e^{0} = 1 $$

$$ \Rightarrow C_1 + C_2 = 1 $$

の関係式が得られます。

 

次に、時刻\(t=0\)で\(\dot{\theta}(0)=0\)なので、

$$ \dot{\theta}(t) = -0.5885 C_1 e^{-0.5885 t} + -12.7449 C_2 e^{-12.7449 t}$$

$$ \Rightarrow \dot{\theta}(0) = -0.5885 C_1 e^{0} + -12.7449 C_2 e^{0} = 0 $$

$$ \Rightarrow -0.5885 C_1 + -12.7449 C_2 = 0 $$

の関係式が得られます。

 

この2式を連立方程式として解くことで\(C_1\)と\(C_2\)は、

$$ C_1 = 1.0484 $$

$$ C_2 = -0.0484 $$

となります。

 

よって、ケース1のパラメータでのシステムの運動は、

$$ \theta(t) =1.0484 e^{-0.5885 t} + -0.0484 e^{-12.7449 t}$$

と表すことが出来ます。

 

グラフで見ると、棒の角度が初期角度の\(\theta_0=1[rad]\)から徐々に小さくなり、0に近づくことが分かります。

 

このようなシステムを加減衰システム(Overdamped System)と言います。

 

 

まとめ

今回は、実際に質量-ばね-ダンパーモデルを例にとって、運動方程式からシステムの運動を求める方法を紹介しました。

 

今回の例では、加減衰システム(Overdamped System)となる場合を取り扱い、システムの運動の様子を数式とグラフで表しました。

 

次回は、他の2つのケース(臨界減衰システムと不足減衰システム)となる場合について、説明したいと思います。

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