システムの安定性:実際にラウス・フルビッツの安定判別法を用いてみる(その3)

ロボットなどのシステムを制御する際にラウス・フルビッツの安定判別法はシステムの安定性を確認するためにとても有用な手法です。

前回は、簡単なフィードバック制御系について、システムの安定性の判別の流れを紹介しました。

ラウス・フルビッツの安定判別法はシステムの安定性を確認するために有用な手法です。 ロボットなどのシステムを制御する際に...

今回は、少し複雑な制御システムを用いて、ラウス・フルビッツの安定判別法を使ったゲイン調整法を紹介していきます。

取り扱う制御システム

今回は、図のようなシステムについてラウス・フルビッツの安定判別法を用いてゲインの調整法を紹介していきたと思います。

システム内では、大きなフィードバックの中に別のフィードバックが存在しています。

内側のフィードバックは、ゲイン\(K_1\)と伝達関数\(G(s)\)を通った信号が、伝達関数\(H(s)\)を通ってフィードバックされています。

その外側をゲイン\(K\)と内側のフィードバック部を通った信号がフィードバックされてシステムを構成しています。

今回は、2つの伝達関数(\(G(s)\)と\(H(s)\))として、

$$ G(s) = \frac{1}{s(s+1)(s+2)} $$

$$ H(s) = s $$

を用います。

この2つの伝達関数(\(G(s)\)と\(H(s)\))と2つのゲイン(\(K\)と\(K_1\))からなる2重のフィードバック系システムについて、この制御系が安定に動作するゲイン\(K\)とゲイン\(K_1\)の範囲をラウス・フルビッツの安定判別法を使用して求めていきます。

システムの伝達関数を作成する

今回の2重フィードバック系システムの伝達関数を作成していきます。

フィードバック系システム全体の伝達関数\(T(s)\)は、2つの伝達関数(\(G(s)\)と\(H(s)\))とゲイン\(K\)を用いて

$$ T(s) = \frac{K G(s)}{1+K G(s) H(s)} $$

と表すことが出来ます。

これより、内側のフィードバック部分の伝達関数\(T_1(s)\)は

$$ T_1(s) = \frac{K_1 \frac{1}{s(s+1)(s+2)}}{1 + K_1 \frac{1}{s(s+1)(s+2)} s } $$

$$ = \frac{\frac{K_1}{s(s+1)(s+2)}}{1 + \frac{K_1 s}{s(s+1)(s+2)} } $$

$$ = \frac{K_1}{s(s+1)(s+2) + K_1 s } $$

と求めることが出来ます。

この内側のフィードバック部分を含んだ外側のフィードバック部分、つまりシステム全体の伝達関数\(T(s)\)は、

$$ T(s) = \frac{K \frac{K_1}{s(s+1)(s+2) + K_1 s }}{1+K \frac{K_1}{s(s+1)(s+2) + K_1 s }} $$

$$ = \frac{\frac{K K_1}{s(s+1)(s+2) + K_1 s }}{1+\frac{K K_1}{s(s+1)(s+2) + K_1 s }} $$

$$ = \frac{K K_1}{(s(s+1)(s+2) + K_1 s)+K K_1} $$

と算出することが出来ます。

ラウス配列を作成する

求めた伝達関数\(T(s)\)から特性方程式\(D(s)\)を求め、ラウス・フルビッツの安定判別法を用いるためにラウス配列を作成していきます。

フィードバックシステム全体の伝達関数\(T(s)\)

$$ T(s) = = \frac{K K_1}{(s(s+1)(s+2) + K_1 s)+K K_1} $$

より、特性方程式\(D(s)\)は伝達関数\(T(s)\)の分母にあたるので、

$$ D(s) = (s(s+1)(s+2) + K_1 s)+K K_1 $$

$$ = s^3 + 3 s^2 + 2 s + K_1 s + K K_1 $$

$$ = s^3 + 3 s^2 + (2 + K_1) s + K K_1 $$

となります。

この特性方程式よりラウス配列を作成します。

$$ \begin{eqnarray} \begin{array}{c|ccc} s^3 & 1 & 2+K_1 & 0 \\ s^2 & 3 & K K_1 & 0 \\ s^1 & \frac{3\cdot (2+K_1)-1\cdot K K_1}{3}=\frac{6 + 3 K_1 – K K_1}{3} & 0 & \\ s^0 & \frac{\frac{6 + 3 K_1 – K K_1}{3}\cdot K K_1 – 3\cdot0}{\frac{6 + 3 K_1 – K K_1}{3}}= K K_1 & & \\ \end{array} \end{eqnarray} $$

算出したラウス配列を用いてラウス・フルビッツの安定判別法を用いていきます。

ラウス・フルビッツの安定判別法を用いる

作成したラウス配列の第一列より、数列を抽出します。

$$ \left[ 1, 3, \frac{6 + 3 K_1 – K K_1}{3}, K K_1 \right] $$

この数列内の全ての値の符号が一致するようにゲイン\(K\)とゲイン\(K_1\)を選択すればシステムは安定になります。

よって、ラウス配列より抽出した数列より、

$$ \frac{6 + 3 K_1 – K K_1}{3} > 0 $$

$$ K K_1 > 0 $$

という関係式が導かれます。

1番目の関係式より

$$ \frac{6 + 3 K_1 – K K_1}{3} > 0 \Rightarrow 6 + 3 K_1 – K K_1 > 0$$

$$ K K_1 < 6 + 3 K_1 $$

$$ K < \frac{6}{K_1} + 3 $$

となります。

よって、システム内のゲイン(\(K\)と\(K_1\))について

$$ K K_1 > 0 $$

であり、

$$ K < \frac{6}{K_1} + 3 $$

の関係式が成り立つ場合、このシステムは安定であると言えます。

まとめ

今回は、少し複雑なシステムの例として2重のフィードバック回路を含んだシステムを用いて、実際にラウス・フルビッツの安定判別法を用いながら制御系内のゲインの最適化を行う方法を紹介しました。

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