制御工学

電気回路システムを伝達関数で表す:RL回路

ロボットを制御するためには、伝達関数(Transfer Function)を用いて、システムを表すことが多くあります。

 

伝達関数を用いることで、ある信号をシステムに入力した際の出力を求めることが出来ます。

 

今回は、電気回路を例に実際にラプラス変換(Laplace Transform)を用いてシステムの伝達関数を表す方法を紹介します。

 

抵抗\(R\)とコイル\(L\)からなる電気回路

図のような抵抗\(R\)とコイル\(L\)からなる電気回路について、入力\(v_i\)が与えられた時の出力\(v_o\)を求めていきます。

 

回路内の各パラメータは、

$$ R_1 = R_2 = 1 [\Omega] $$

$$ L= 1 [H] $$

として計算します。

 

このシステムに対し、入力\(v_i\)に対する出力\(v_o\)を求めるために、システムをラプラス変換を用いて時間領域\(t\)から周波数領域\(s\)に変換し、伝達関数を求めていきます。

 

ラプラス変換を用いて各パラメータを変換する

各パラメータについてラプラス変換を用いて時間領域\(t\)から周波数領域\(s\)に変換します。

 

時間領域\(t\)における入力\(v_i(t)\)と出力\(v_o(t)\)は、周波数領域\(s\)ではそれぞれ\(V_i(s)\)と出力\(V_o(s)\)で表されます。

 

抵抗\(R\)に電流\(i(t)\)が流れた際の両端の電圧\(v_R(t)\)は、

$$ v_R(t) = R i(t) $$

で求めることが出来ます。

 

これをラプラス変換を用いて周波数領域\(s\)に変換すると、

$$ V_R(s) = R I(s) $$

と表すことが出来ます。

 

同様に、コイル\(L\)に電流\(i(t)\)が流れた際の両端の電圧\(v_L(t)\)は、

$$ v_L(t) = L \frac{d i(t)}{dt} $$

で求めることが出来ます。

 

これをラプラス変換を用いて周波数領域\(s\)に変換すると、

$$ V_L(s) = s L I(s) $$

と表すことが出来ます。

 

キルヒホッフの法則を用いて閉回路内での関係式を求める

キルヒホッフの法則(Kirchhoff’s Law)を用いて、各閉回路での関係式を算出します。

 

今回は、コイル\(L\)に流れる電流を\(i_1\)、抵抗\(R_2\)に流れる電流を\(i_2\)とします。

 

これより、キルヒホッフの第一法則より、抵抗\(R_1\)に流れる電流\(i\)は、

$$ i(t) = i_1(t) + i_2(t)  $$

と表すことが出来ます。

 

次にキルヒホッフの第二法則を用いて、閉回路内での関係式を求めていきます。

 

閉回路は自由にとることが出来ますが、今回は、

  • 入力\(v_i\)から抵抗\(R_1\)を通りコイル\(L\)に行き、入力\(v_i\)に戻る閉回路と
  • 抵抗\(R_2\)(出力\(v_o\))からコイル\(L\)に行き、抵抗\(R_2\)(出力\(v_o\))に戻る閉回路

を取り扱います。

 

この二つの閉回路について、それぞれキルヒホッフの第二法則を用いると、

$$ V_i(s) = R_1 (I_1(s) + I_2(s)) + L s I_1(s) $$

$$ 0 = – L s I_1(s) + R_2 I_2(s) $$

と表すことが出来ます。

 

ここで、今回の出力\(v_o(t)\)は、

$$ V_o(s) = R_2 I_2(s) $$

です。

 

この出力についての式と、2つ目の閉回路についての関係式から、

$$ I_1(s) = \frac{R_2 I_2(s)}{s L} = \frac{V_o(s)}{s L} $$

$$ I_2(s) = \frac{V_o(s)}{R_2} $$

と各電流に対する関係式を求めることが出来ます。

 

今回のシステムについて、各パラメータは

$$ R_1 = R_2 = 1 [\Omega] $$

$$ L= 1 [H] $$

と定義しています。

 

このパラメータの値を1つ目の閉回路についての関係式と、各電流についての関係式について代入すると、

$$ V_i(s) = I_1(s) + I_2(s) + s I_1(s) $$

$$ I_1(s) = \frac{V_o(s)}{s} $$

$$ I_2(s) = V_o(s) $$

となります。

 

これより、各電流についての式を1つ目の閉回路についての関係式に代入すると、

$$ V_i(s) = \frac{V_o(s)}{s} + V_o(s) + s \frac{V_o(s)}{s} $$

$$ V_i(s) = \frac{2 s + 1}{s} V_o(s) $$

となります。

 

これより、入力\(V_i(s)\)と出力\(V_o(s)\)の関係\(\frac{V_o(s)}{V_i(s)}\)を示す伝達関数\(G(s)\)は、

$$ G(s) = \frac{V_o(s)}{V_i(s)} = \frac{s}{2s+1} $$

と算出することが出来ました。

 

まとめ

今回は、実際に電気回路の例を用いて、ロボットの制御に必要な伝達関数の求め方を紹介しました。

 

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