制御工学

1次遅れ系システムのステップ応答

ロボットなどの動的システムを表した伝達関数から、システムの入力に対する応答を算出することが出来ます。

 

今回は、1次遅れ系システムについて、システムの伝達関数の基本形とステップ応答について紹介します。

 

1次遅れ系システムの伝達関数

1次遅れ系システムの伝達関数\(T(s)\)は、

$$ T(s) = \frac{a}{s+a} $$

と表すことが出来ます。

 

伝達関数\(T(s)\)から分かるように、分母に含まれる項の中で一番大きい\(s\)の乗数は1です。

$$ T(s) = \frac{a}{s+a} = \frac{a}{s^1+a s^0} $$

 

このような伝達関数を持つシステムを1次遅れ系システムを言います。

 

実際のシステムでは、

$$ T(s) = \frac{K a}{s+a} $$

と比例定数\(K\)を含んだり、

$$ T(s) = \frac{K}{\tau s+ 1}$$

という形で表されることもありますが、基本的な考え方や特性は同じです。

 

1次遅れ系システムのステップ応答

1次遅れ系システムの伝達関数\(T(s)\)の基本形

$$ T(s) = \frac{a}{s+a} $$

から、システムにステップ状の入力を与えた場合の出力(ステップ応答)の特性

  • 立ち上がり時間(Rise Time)
  • 静定時間(Settling Time)

を算出する方法を紹介します。

 

立ち上がり時間

システムにステップ入力を与えた際のシステムの応答について、出力が最終値の10%から90%までに要する時間を立ち上がり時間(Rise Time)と言います。

 

1次遅れ系システムの立ち上がり時間\(T_r\)は、

$$ T_r = \frac{2.2}{a} $$

で求めることが出来ます。

 

この式は、下記のように求められています。

 

1次遅れ系システムの伝達関数

$$ T(s) = \frac{a}{s+a} $$

から、逆ラプラス変換を用いて時間領域\(t\)でのシステムのステップ応答を求めると、

$$ G(s) = \frac{1}{s} \frac{a}{s+a} $$

$$ = \frac{1}{s} – \frac{1}{s+a} $$

$$ \Rightarrow g(t) = 1 – e^{-at} $$

となります。

 

これより、最終値の10%となる際の時刻\(t_1\)は、

$$ 0.1 = 1 – e^{-a t_1 } $$

$$ e^{-a t_1 } = 0.9 $$

$$ – a t_1 = \log (0.9) $$

$$ \Rightarrow t_1 = – \frac{\log (0.9)}{a} $$

と算出することが出来ます。

 

同様に、最終値の90%となる際の時刻\(t_2\)は、

$$ 0.9 = 1 – e^{-a t_2 } $$

$$ e^{-a t_2 } = 0.1 $$

$$ – a t_2 = \log (0.1) $$

$$ \Rightarrow t_2 = – \frac{\log (0.1)}{a} $$

と求めることが出来ます。

 

これより、最終値の10%から90%までに要する時間\(T_r\)は、

$$ T_r = t_2 – t_1 = \frac{- \log (0.1) + \log (0.9)}{a}$$

$$ = \frac{2.1972}{a} $$

$$ \Rightarrow T_r = \frac{2.2}{a} $$

と表せられることが分かりました。

 

静定時間

システムにステップ入力を与えた際のシステムの応答について、出力が最終値の\(\pm P_c\%\)以内になるまでに要する時間を静定時間(Settling Time)と言います。

 

1次遅れ系システムの静定時間\(T_s\)は、\(\pm P_c \)%により

$$ T_s (1\%) = \frac{4.6}{a} $$

$$ T_s (2\%) = \frac{4}{a} $$

$$ T_s (5\%) = \frac{3}{a} $$

とそれぞれ求めることが出来ます。

 

この式は、下記のように求められています。

 

立ち上がり時間を証明した際と同様に、ステップ状の入力が与えられた時のシステムのステップ応答は

$$ g(t) = 1 – e^{-at} $$

と表すことが出来ます。

 

出力が最終値の\(\pm\) 1%以内になる時間と言うことは、言い換えると出力が最終値の99%になるために必要な時間ということです。

 

これより、出力が最終値の\(\pm\) 1%以内になるまでに要する静定時間\(T_s\)は、

$$ 0.99 = 1 – e^{-a T_s} $$

$$ e^{-a T_s } = 0.01 $$

$$ – a T_s = \log (0.01) $$

$$ \Rightarrow T_s = – \frac{\log (0.01)}{a} = \frac{4.6052}{a}= \frac{4.6}{a} $$

と表せられることが分かりました。

 

同様に\(\pm\)2%や\(\pm\)5%の場合の静定時間\(T_s\)についての式も証明することが出来ます。

 

まとめ

今回は、ロボットなどの動的システムを表した1次遅れ系システムの伝達関数から、システムのステップ入力に対するステップ応答の特性を算出する方法を紹介しました。

 

次回は、2次系システムについてステップ応答の特性を伝達関数から求める方法を紹介したいと思います。

2次遅れ系システムの伝達関数とステップ応答ロボットなどの動的システムを表した2次遅れ系システムの伝達関数から、システムのステップ入力に対するステップ応答の特性を算出する方法を紹介します。...

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です