ロボットなどのシステムの安定性を判別することは、ロボットなどを制御する際にとても重要です。
前回の記事では、システムが簡単な伝達関数で表される場合のシステムの安定性を判別する方法を紹介しました。
今回は、伝達関数が複雑な場合における安定性を判別する方法を紹介します。
伝達関数と特性方程式
ロボットなどの伝達関数\(G(s)\)が
$$ G(s) = \frac{b_m s^m+b_{m-1} s^{m-1}+\cdots+b_1 s+b_0}{s^n+a_{n-1} s^{n-1}+\cdots+a_1 s+a_0} $$
と表されるシステムを考えます。
このシステムの特性方程式\(D(s)\)は、伝達関数\(G(s)\)の分母より
$$ D(s) = s^n+a_{n-1} s^{n-1}+\cdots+a_1 s+a_0 $$
となります。
もし特性方程式\(D(s)\)が、
$$ D(s) = s^2 + 3 s+ 2 $$
のような簡単な式の場合、この特性方程式を
$$ s^2 + 3 s+ 2 = 0 $$
$$ (s+1)(s+2) = 0 $$
$$ \Rightarrow s = -1,-2 $$
と解くことで、解は\(s=-1,-2\)となり2つとも複素平面の左側に存在するため、システムが安定であることが分かります。
しかし、伝達関数\(G(s)\)から得られる特性方程式\(D(s)\)が
$$ D(s) = s^4 + 11 s^3 + 41 s^2 + 61 s + 1030 $$
のように複雑になった場合、この特性方程式\(D(s)\)を\(s\)について解くのは簡単ではありません。
このように、特性方程式\(D(s)\)が複雑になり解を直接求めることが難しい場合において、システムの安定性を判別する方法として、ラウス・フルビッツの安定判別法があります。
ラウス・フルビッツの安定判別法とは、ロボットなどのシステムの制御系が安定か不安定化を調べるための方法です。
ラウスの安定判別法とフルビッツの安定判別法がありますが、数学的に同じとも言える2つの判別法を合わせて、ラウス・フルビッツの安定判別法と言われています。
フルビッツの安定判別法
今回は、フルビッツの安定判別法を用いて、システムが安定か不安定かどうかを確認する2つの方法を紹介します。
フルビッツの安定判別法によると、伝達関数\(G(s)\)より得られる特性方程式\(D(s)\)について、
- 全ての係数が同符号
- 全ての係数が存在
の2つの条件を満たしていない場合、対象の制御システムは不安定になります。
この2つの方法を用いることで簡単に制御システムが不安定であると判断することが出来ます。
特性方程式のすべての係数が同符号
システムの伝達関数が
$$ G(s) = \frac{120}{s^5+3 s^4 – 23 s^3+ -51 s^2+94 s+120} $$
で表される際の特性方程式は
$$ D(s) = s^5+3 s^4 – 23 s^3 -51 s^2+94 s+120 $$
となります。
この特性方程式について、各係数の符号を確認すると\(+,+,-,-,+,+\)と”\(+\)”(プラス)と”\(-\)”(マイナス)が含まれています。
よって、このシステムは不安定であると言えます。
因みに、この特性方程式を因数分解すると、
$$ D(s) = s^5+3 s^4 – 23 s^3 -51 s^2+94 s+120 $$
$$ = (s+1)(s-2)(s+3)(s-4)(s+5) $$
となるため、特性方程式の解は\(s=-5,-3,-1,2,4\)となり、全ての解が複素平面の左側にないため、先程の不安定という判別が正しかったことが分かります。
特性方程式にすべての係数が存在する
システムの伝達関数が
$$ G(s) = \frac{10}{s^5+ 2 s^4 + 6 s^2+5 s+3} $$
で表される際の特性方程式は
$$ D(s) = s^5+ 2 s^4 + 6 s^2+5 s+3 $$
となります。
この特性方程式について、各係数を確認すると\(s^3\)の項の係数が0になっていることが分かります。
よって、このシステムは不安定であると言えます。
まとめ
今回は、制御系の伝達関数が複雑な場合における安定性を判別する方法として、ラウス・フルビッツの安定判別法の内のフルビッツの安定判別法の2つを紹介しました。
今回紹介した判別法を用いることで、複雑な伝達関数から得られた複雑な特性方程式を解かずに制御システムの安定判別法を行うことが出来ます。
次回は、ラウス・フルビッツの安定判別法の内のラウスの安定判別法について紹介したいと思います。