システムの伝達関数が与えられた場合に、その伝達関数からボード線図を書く方法を紹介しています。
前々回と前回の記事では、比例要素や微分要素が伝達関数として与えられた場合のボード線図の書き方を紹介しました。
今回は、積分要素が伝達関数で与えられた場合について、ボード線図の書き方を紹介していきたいと思います。
積分要素の伝達関数
今回は、システムの伝達関数\(G(s)\)として
$$ G(s) = \frac{1}{s} $$
のように、積分要素が与えられた場合についてボード線図を求めていきます。
ここで、ボード線図は入力信号\(u(t)\)と出力信号\(y(t)\)の定常状態での関係を示すため、複素数\(s\)
$$ s = \sigma + j \omega $$
について、虚数部\(j \omega\)のみを用いて
$$ s = j \omega $$
と変換します。
よって、与えられた積分要素を表す伝達関数\(G(s)\)は
$$ G(j \omega) = \frac{1}{j \omega} = – j \frac{1}{\omega}$$
と書き換えることが出来ます。
ゲインと位相を算出
積分要素に対するボード線図を書くために、周波数とゲインおよび位相の関係を算出していきます。
基本的な流れは、微分要素の場合と同様になります。
入力信号\(u(t)\)が
$$ u(t) = M_{in} \sin (\omega t + \phi_{in}) $$
で表されるとき、積分要素\(\frac{1}{s}\)を通した出力信号\(y(t)\)は
$$ \begin{eqnarray} y(t) &=& \int u(t) dt = – \frac{1}{\omega} M_{in} \cos (\omega t + \phi_{in}) \\ &=& \frac{1}{\omega} M_{in} \sin \left(\omega t + \phi_{in} – \frac{\pi}{2} \right) \end{eqnarray} $$
となります。
よって、この伝達関数\(G(j \omega)\)から、振幅の値\(A [dB]\)は
$$ \begin{eqnarray} A &=& 20 \log M \\ &=& 20 \log \frac{\frac{1}{\omega} M_{in}}{M_{in}} \\ &=& 20 \log \frac{1}{\omega} \\ &=& – 20 \log \omega \ [dB] \end{eqnarray} $$
となります。
また、位相の値\(\phi [^{\circ}]\)は
$$ \begin{eqnarray} \phi &=& \phi_{in} – \frac{\pi}{2} – \phi_{in} \\ &=& – \frac{\pi}{2} \ [rad] \\ &=& -90 \ [^{\circ}] \end{eqnarray} $$
と求められます。
よって、伝達関数\(G(s)\)が積分要素\(\frac{1}{s}\)の場合のボード線図は、
$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} A(\omega) &=& – 20 \log \omega \ [dB] \\ \phi(\omega) &=& -90 \ [^{\circ}] \end{array} \right. \end{eqnarray} $$
となる事が分かりました。
積分要素のボード線図
算出した式よりゲイン線図の値について、微分要素の場合と同様に信号の周波数\(\omega\)と振幅\(A[dB]\)の値は対数(\(\log\))の関係になります。
$$ \begin{eqnarray} \begin{array}{c|c} \omega \ [rad/s] & A \ [dB] \\ \hline 10^{-2} & 40 \\ 10^{-1} & 20 \\ 10^0 & 0 \\ 10^1 & -20 \\ 10^2 & -40 \\ 10^3 & -60 \\ \end{array} \end{eqnarray} $$
ボード線図の横軸である周波数\(\omega\)も対数で表されるため、積分要素のゲイン線図は右下がりの直線で表されます。
また、位相線図の値は信号の周波数に影響せずに一定値(\(-90^{\circ}\))となります。
これより、積分要素の伝達関数\(G(s)\)のボード線図は下図のようになります。
ボード線図からも分かるように、ゲイン線図は周波数の増加とともに振幅が減少する右下がりの直線で表されます。
この時、周波数が1桁上がるごとにゲインが20dB下がるため、グラフの傾きは\(-20 dB/decade\)となります。
また、位相線図は周波数に影響されず一定の値(\(-90^{\circ}\))となる事が分かりました。
まとめ
今回は、伝達関数として積分要素が与えられた場合のボード線図の書き方を紹介しました。
微分要素のボード線図と比較すると、それぞれのボード線図は\(0 [dB]\)と\(0 [^\circ]\)について上下方向に対称になっていることが分かります。
次回は、伝達関数として微分要素と定数要素の並列で表される1次進み要素
$$ G(s) = s+a $$
が与えられた場合について、ボード線図を書く方法を紹介していきたいと思います。